公開日:2026/8/29|執筆:弁護士 末安陸斗
売却の相談に来た売主の話を聞くと、住宅ローンの残債が査定額を明らかに上回っている。しかも数か月前から滞納が始まっているらしい――このとき仲介会社が通常の売却と同じ順番で動くと、途中で必ず詰まります。オーバーローン物件で押さえるべき順番を説明します。
オーバーローン物件では、売却代金を全額返済に充てても抵当権を抹消できません。つまり、債権者(抵当権者)が「この金額で抹消に応じる」と同意しない限り、決済ができないのです。買主が見つかってから同意が取れないことが判明すると、契約は白紙になり、買主にも売主にも迷惑がかかります。
だから順番が変わります。販売活動より先に、債務の全体像と債権者の意向を把握するのが先です。
売主に確認すべきは、住宅ローンの残債だけではありません。カードローンや事業の借入、税金の滞納があるか。後順位の抵当権や、税金滞納による差押えの登記が入っていないか。登記事項証明書と、売主からの債務のヒアリングで全体像をつかみます。
ここで債務が住宅ローンだけなら、債権者(多くは保証会社やサービサー)との抹消交渉が中心の、比較的シンプルな任意売却です。しかし複数の債務や税金滞納が絡むと、売却後に残る債務の処理――分割和解か、自己破産や個人再生か――まで設計しないと、売主の問題は解決しません。
弁護士が入るのが決済の直前だと、できることは限られます。販売開始の前なら、次のことができます。
特に売主が督促に追われてパニック状態のときは、弁護士が債権者対応の窓口を引き受けるだけで、案件が前に進み始めます。
売主が「売却後は破産するしかない」という状況なら、注意点が増えます。破産すると裁判所が破産管財人を選任し、管財人は破産前の財産の動きを審査します。相場より明らかに安い売却や、売却代金を親族や特定の債権者への返済だけに充てる処理は、管財人に否認され、売買自体が覆るリスクがあります。
適正価格で売り、代金の流れを透明にしておけば、破産予定の売主の物件でも問題なく決済できます。どこまでが安全でどこからが危険かの線引きは、破産管財人を務めている弁護士の得意分野です。判断に迷う案件は、契約前にご相談ください。
任意売却は、査定・販売・買主の確保は不動産会社、債務の設計と債権者交渉は弁護士、という分担がかみ合うと速く進みます。当相談室では、不動産会社様からの案件のご相談を初回無料でお受けしています。紹介料のやり取りは法律上できませんが、その分、対応の速さでお返しします。
「この案件、弁護士に頼むほどか分からない」という段階で構いません。動き方の当たりを付けるだけでも、お役に立てます。