物件も買主も揃っているのに、売主側の事情で取引が止まる。仲介の現場で最も歯がゆい場面です。売主の債務、相続、離婚――これらは弁護士が入ることで動き出す典型例です。場面ごとに、何が問題でどう動かすのかを説明します。
売主に多額の債務があり、住宅ローンも滞納気味。このまま売却を進めてよいのか、という相談は増えています。結論をいえば、進め方を誤ると売買契約そのものが後から覆るリスクがあります。売主が売却後に破産すると、破産管財人が売買を否認できる場合があるからです。相場より安い売却や、代金が特定の債権者への返済に消えた売却は、特に危険です。
弁護士が入ると、売主の債務全体を把握したうえで、任意売却として進めるのか、破産手続の中で管財人が売却するのか、手続の選択から設計できます。適正価格・適正な代金の流れで組んだ売却は、後から覆されません。仲介会社様にとっては、「決済まで行ったのに無効になった」という最悪の事態を防ぐ保険になります。詳しくは任意売却の法務もご覧ください。
相続した不動産の売却には、原則として相続人全員の合意が必要です。ところが実際には、疎遠な相続人と連絡が取れない、1人だけ協力を拒んでいる、認知症の相続人がいる、といった事情で全員のハンコが集まらないことがよくあります。
打ち手は事情ごとに違います。連絡が取れないだけなら、戸籍と住民票をたどって弁護士名で連絡すると応じてもらえることが多い。拒んでいる相続人がいるなら、遺産分割調停の中で売却の合意を作る。認知症の方がいるなら、成年後見人の選任を申し立てる。どのルートでも数か月単位の時間はかかりますが、「塩漬け」だった物件に決済までの道筋が立ちます。
仲介会社様からのご相談であれば、初回相談で「この物件はどのルートで、どのくらいの期間か」の見立てをお伝えできます。売主様への説明資料としてもお使いください。
離婚に伴う自宅の売却は、名義が夫婦共有、住宅ローンの連帯保証付き、しかもオーバーローンという三重苦になりがちです。当事者同士は感情的に対立しているため、売却条件の合意そのものが進みません。
弁護士は財産分与の枠組みの中で、売却代金の分け方・ローン残債の負担・連帯保証の処理をまとめて合意にします。仲介会社様が夫婦の板挟みになって伝言役を続けるより、早い段階で「条件面は弁護士に整理してもらいましょう」と切り分ける方が、結果として決済が早く来ます。
売買仲介での法律問題は、賃貸管理と違って単発で大きく、取引の成否に直結します。1件ごとのスポット相談から使っていただけますが、月に数件こうした案件が出る会社様には、契約書・重要事項説明のチェックまで含めた顧問契約が向いています。「弁護士に確認済み」の一言は、売主・買主双方への説明力にもなります。
「この案件、弁護士に頼むほどか分からない」という段階で構いません。動き方の当たりを付けるだけでも、お役に立てます。